経済産業省・ブランド価値評価モデルに関して
| 去る02年6月、経済産業省はブランド価値評価研究会報告書をまとめ、経済産業省モデルと名付けたブランド価値の評価モデルを公表しました。新聞各紙には「日本企業でのブランド価値のトップはソニーの4兆4千億円で3位の松下電器産業の1兆7千億円の2倍以上」などとの記事が掲載され世間の耳目を集めたことは記憶に新しいところです。この報告書は会計学や企業会計に従事する方々あるいはアナリストなど証券業界の方々の注目を集めたようですが、マーケティングの世界からは、今のところ黙殺されているように思われます。今回のBRAND AT RANDOMでは当報告書の内容を紹介しつつ、マーケティングの観点から当モデルについてコメントをしてみたいと思います。まずは長くなりますが、このプロジェクトを担当された経済産業省 経済産業政策局 産業組織課 前課長の櫻井和人氏のコメントを引用してみます。 |
|
我が国においては、他の先進諸国と同様に、企業経営におけるインタンジブルズ(無形の経営資源)の重要性が増大しています。現在、バランスシートに計上されているタンジブルズ(有形の経営資源)では、企業価値を相当程度反映しているとされる株価を十分に説明することはできない(バランスシートに計上されているタンジブルズを前提とした株主資本と、株式時価総額との間に大きな乖離がある)ことは、インタンジブルズの重要性を端的に示していると言えます。そして、ブランドは最も重要なインタンジブルズの1つであることは、疑いのないところです。 こうしたことから、ある企業のブランド価値がどの程度あるのかは、当該企業経営者にとっても、また企業の株主や投資家にとっても重要な情報です。ところが企業経営者がブランド重視の経営をしようとした場合にも、また株主や投資家が企業のブランド価値を評価しようとした場合にも、そもそも企業のブランド価値について評価方法が確立していないことが妨げになり得ます。したがって、ブランド価値の客観的な評価方法の確立が喫緊の重要課題であると思われ、これが、当省がブランド価値評価研究会を設けた主な理由です。 研究会では、まずブランドを「企業が自社の製品等を競争相手の製品等と識別化または差別化するためのネーム、ロゴ、マーク、シンボル、パッケージ・デザイン等の標章」と定義しました。そしてブランドのもたらす競争優位は、顧客が製品等の物理的又は機能的側面よりもブランドを拠り所とした製品等の購入の意思決定を行うようになる点にある、と考えた上で、これをより具体的に、 (1)価格優位性:ノン・ブランド製品等と比較して品質および機能がまったく同一であるとしても、高い価格で販売できる性質 (2)販売数量安定性安定性(ロイヤルティ):顧客が当該ブランド製品等を反復、継続して購入することで安定した販売数量を確保できる性質 (3)拡張力:類似業種、異業種、海外市場へ拡張することを容易にする性質 の3つの要素からなると分析しました。そして3つの要素をそれぞれ、プレステージ・ドライバ(PD)、ロイヤルティ・ドライバ(LD)、エクスパンション・ドライバ(ED)によって表現し、ブランド価値を
| ブランド価値=PD×LD×ED/r( r は割引率) |
という算式で算定するモデルを構築しました。具体的な算定式は図表の通りです。
このモデルは、公表された財務データを主として用いることにより客観性の高い評価額が算出可能である点に特徴があると言えるでしょう。 研究会では、上記モデルの構築に加え、ブランド資産のオンバランスの可能性などブランド資産のディスクロージャーのあり方についても検討を加えました。また企業へのアンケート調査を行い、モデルによるブランド価値の試算とアンケート調査結果との関係を分析し、また我が国におけるグループ経営の進展に伴いグループ企業間でブランド使用料を取る実務が普及しつつあることから、上記モデルをベースとしたブランド使用料の算定方法についてモデルを提示しました。 本報告書が、ブランド重視の企業経営などブランドを巡る諸問題を検討するに当たり、有益な議論のベースとなることを期待しております(なお本報告書は、現在英訳作業を行っているところです)。
|
|
長い引用で残念ながら紙幅が尽きてしまいました。 ブランド価値の評価モデルについては、無形資産をオンバランス化しようとする必要性から、アメリカやヨーロッパでも研究が進められています。その中で、国自らが、グローバルな会計基準を意識した評価モデルを研究、発表したことは大いに意義のある試みと言えます。 「ブランドは消費者の頭の中にある」と考えている我々マーケッターからは、財務データで全てを評価するのは、いくら客観性を保障するといってもどうしても解せないところが残りますが、一橋大学の伊藤教授が発表されている「CBバリュエーター」モデルなど共に更なる議論の深まりを期待したいところです。 *我々TCDブランディングとしても、「ブランド価値」を評価するしくみを独自に研究しています。近いうちに発表する機会をいただきたいと考えておりますので、ご期待ください。
|
参考サイト(経済産業省)
 |
 |
|
・
ブランド価値評価研究会報告書の公表について(pdf)
・
ブランド価値評価研究会報告書について(pdf)
・
ブランド価値評価研究会報告書
TCDブランディングカンパニー プレジデント 岡田一雄