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前回に続いて、ブランドのポジショニングについての議論をしてみたいと思います。
ブランドのポジショニングは、ブランドを長期に亘って、一貫性をもって管理していく上で明確にさせておかなければならない性質のものであり、且つ、個々のマーケテイング活動の整合性を保持するためにも不可欠なものであることを強調しました。ブランド・ポジショニング(これを明確に表現したものを「ブランド・ポジショニング・ステートメント」と称しています。)は、"そのブランドは、消費者(顧客)にとって、何なのか。"を明確にしたものである、と考えることができます。この"消費者(顧客)にとって"ということと"何なのか"という二つの点を考えることは、ブランドの価値を享受していただきたい消費者(顧客)は誰なのかということと、ブランドの価値を突き詰めていくと究極的には何が消費者にとってそのブランドの価値なのか、という問に答えること、すなわち、その問に対する解を見出し、何らかの方法で確証を得て表現することになります。
誰が消費者(顧客)なのか。この問に対する答えは決して簡単なものではありません。ある製品カテゴリーに先発ブランドがいくつか存在することは、それらのブランドが対象としている消費者(顧客)の分析が、ある程度の示唆を与えてくれるでしょうが、その消費者(顧客)層と同じであるべきか、別に設定するべきかの判断が求められます。新しいカテゴリーを作っていくようなマーケテイング活動が必要な場合も少なくありません。そのような場合は、潜在的な消費者(顧客)がどのような人たちなのか、そのベネフィットを求めている人たちは将来的に拡大の可能性があるのか、また、後発ブランドが参入してきた場合に、十分に保持できるのか、といった観点からも検討して決定される必要があります。このような形で決めた消費者(顧客)層は、ブランド・ポジショニング・ステートメント(以下、BPS)では「ターゲット・コンシューマー」として規定されることになります。
次に、ブランドの価値(キー・コンシューマー・ベネフィット、あるいは、ベーシック・コンシューマー・ベネフィット)について考えてみたいと思います。これは、一般的にいわれている「ブランド・コンセプト」に近い概念です。"キー"あるいは"ベーシック"と表現していることからもご理解頂けると思いますが、このブランドの価値=ベネフィットは多重性を持っています。すなわち、機能的・物理的価値、感覚的価値、心理的・情緒的価値です。これに社会的価値を加えて考えることも場合によっては必要で、意味を持つ場合もあります。BPSで最初の部分に表現される「キー・コンシューマー・ベネフィット」は、これらの価値のうち、中心的な部分(すなわち、核=コア)をなす部分で、BPS作成上、最も知恵とエネルギーが求められるところです。英語で表現する場合は、5−6語(5−6words )で完結し、且つ多様な意味合いにならないことが求められます。
この「キー・コンシューマー・ベネフィット」に関してもう3つの重要な点があります。
そのひとつは、機能的・物理的価値が、このベネフィットの中心を占めた場合の危険性です。非安定性といっても良いと思います。すなわち、技術的な競争において常に競合ブランドと優位性を維持することの困難性です。私は、技術的優位性を否定しているのではありませんが、それだけでブランドの価値を確立し高揚させていくことの困難性を認識するべきだと考えています。
ある有名な大学院教授のブランド研究者は、技術的優位性はブランドの価値を確立していく上で「入り口」としての役割しか持たない、と仰っています。
2つ目は、機能的・物理的価値、感覚的価値、そして心理的・情緒的価値といったそれぞれの価値側面間の整合性です。BPSでは、「キー・コンシューマー・ベネフィット」を規定した後、「そのようなベネフィットが成立する証拠・理由」をこれらの価値側面の整合性に求めます。実際に表現しようとすると、意外に困難な作業であることに気付かされます。
最後は、これらの価値の重点移動です。先ほど、技術的優位性に裏打ちされた「機能的・物理的価値」は「入り口」としての役割を担う、と申しましたが、この優位性がなければブランドの価値を認めてくれる消費者(顧客)はほとんどいないでしょう。しかし、ブランドが成長していくに従って、「心理的・情緒的価値」に重点移動させていかなければ、ブランド価値の醸成は難しくなるという点です。
次回は、このような点を更に深く議論しつつ、製品カテゴリーをどのように考えるべきか、それをBPSの中にどのように取り込むべきかについての議論を展開したいと思います。