ブランドのポジショニング5
今回はパッケージ戦略について、BPSの視点から考えてみたいと思います。パッケージについて考える場合、3つの観点が必要になります。1つ目は、パッケージに求められている機能面、2つ目は環境との関係、3つ目はコミュニケーションの観点からです。マーケティングの仕事に携わる者は、この3つ目のコミュニケーションの観点、特にパッケージ・デザインのことを中心に考えがちですが、BPSでは、ブランド・ポジショニングを具体的に表現したものとして、この3つの観点を含んでいることを必要とします。
先ず、はじめに機能面について考えてみたいと思います。パッケージは、そのパッケージで覆われている製品の中味を保護するためだけでなく、機能面では他にいくつもの要件を満たす必要があります。たとえば、輸送途上や保管時に倒れたり、くずれたりしないこと、製造過程で十分にマシンにかかること、あるいは家庭での使用にあたって便利なこと、などを挙げることができます。私の苦い経験のひとつに、あるパッケージを開発した際、男性の手では簡単に蓋を開けることができたのですが、主消費者の主婦の手では大きすぎて開けにくいパッケージを開発してしまったことがありました。また、店頭シェルフで、十分に立っていないパッケージをよく見かけることがあるのは、この機能面を十分に検討せず、市場導入されてしまったケースと言えましょう。
2番目の環境との関係についてですが、言うまでもないとはいえ、重要な側面として挙げておく必要があると思います。焼却・廃棄の際の環境問題、長期間使用の際の環境問題、生産過程での環境問題も十分に考慮する必要があります。
最後のコミュニケーションの観点ですが、パッケージが重要なコミュニケーションの役割を担っていることをあらためて認識しておく必要があります。BPSの観点からすると、BPSでブランド価値の中心に置く「基本的な消費者ベネフィット」の表現がなされていなければならない、ということになります。『BPSをサポートし、望ましい印象を提供できること』、『ブランドが明確に示されていること』などが求められます。この点に関して言えば、販売がスムーズに進展しない場合に、パッケージが飽きられたからだ、パッケージのインパクトが弱いからだ、という思い込みや判断で安易にパッケージのデザインを変更してしまう過ちを犯しやすいことです。販売がスムーズに進展しないのは、パッケージが問題の場合もありますが、もっと複合的なものです。十分なブランド診断の上に立って、パッケージが問題ならば、パッケージのどの点が問題なのかを見極めることが重要です。
私は、パッケージ開発に際して、「パッケージ・デザイン・ブリーフ」を作成するように勧めていますが、これはBPSと十分にリンクしたものでなければなりません。パッケージを変更したために、消費者が店頭で変更後のパッケージを、自分のお気に入りのブランドのパッケージとは気付かずに通り過ぎてしまったり、競合ブランドを購入したりするケースもよく報告されています。従って、ブリーフのデザイン目的のところに、「ブランド・イメージ、表現されるべき主要アイデアと副次的アイデア」をきちんと記述し、デザイン・テストの際のチェック項目や、デザインを決定する際のクライテリア(基準)を明確にしておかなければなりません。決して変更してはならないパッケージの要素も確認するべきでしょう。さらに、デザインを担当する側からすれば、製品が陳列される流通のタイプ、必要なパック・サイズの種類、使用可能な資材の種類、印刷・生産のプロセスについても十分な情報を提供して欲しいところです。
BPSとの関連で、もう1点重要な点を付け加えれば、BPSでは「消費者ターゲット」を明確に規定しますが、その情報はパッケージ・デザイン・ブリーフでも再確認される必要があるということです。また、競合関係についても十分な情報が必要であることは言うまでもありません。パッケージがコミュニケーションの一環を担うという点では、他のコミュニケーション・メディアとの表現上の一貫性も重要なポイントです。以上述べたどの観点とも関連しますが、コストの制約があることも忘れてはならない点です。アメリカで働いていたときの経験ですが、「パッケージング」という部署があり、そこのスタッフは、パッケージのデザインに関すること以外のすべての相談に乗ってくれ、素晴らしいアイデアを提供してくれました。彼らのお蔭で、ブランド・マネジャーはデザインを担当する部署との連携の中で、ブランドのベネフィットの表現に注力することができたのです。
追記:第4回の「価格戦略」のところで、値引きによるさまざまなリスクについて述べましたが、10%の値下げを行うと11%の販売量の増加がなければ同じ粗利を獲得することができない、と述べました。これは、粗利率が同じとした場合に適用できる記述で、正確でないとのご指摘を読者の方から頂戴致しました。値下げ後の粗利率によりますが、40-50%の販売量の増加が必要になることがあります。
ブランド・ヘリテージ・ラボ 代表 末包 厚喜