流通戦略(Distribution)
今回は流通戦略について述べたいと思います。BPSという短いドキュメントの中で、ポジショニングに関する主要要素に流通を加えて記述することは、当該ブランドをどのような流通をとおして消費者・顧客に理解され、浸透し、受容されるのがもっとも相応しいかを戦略的に規定しておくことを求めているからです。従って、マージンやリベートなどを含めて流通戦略の全体を細かに記述するというものではありません。マージンやリベートは競争関係の中で、相対的強さを考慮しつつ戦術的に決められる面をもっています。むしろ、流通面から、当該ブランドのポジションを規定し、ブランドを支える他の要素との整合性を確認し、ブランドの価値が最も高められるにはどのような流通を設定することが望ましいかに主眼が置かれています。
このことは、また実務面からしますと、ターゲットとして規定した消費者・顧客をもっとも多く掴むことのできる流通はどのようなものか、自社の得意とする流通を活かすことができるのか、あるいはブランドのポジションからしてそのような設定は正鵠を得ているかを考えることとも言えましょう。場合によっては、既存の流通を活用するより、新規の流通開拓が必要な場合もあります。当然のことながら、流通における効率を重要視しなければなりません。新規開拓にしても、自社独自で行うか、提携するかなどの判断が求められます。少し旧いケースですが、アメリカのある食品企業は、スーパーマーケットの成長を予見し、スーパーマーケットに照準を合わせた流通戦略をいち早く採択することによって成長を果たしました。
少し具体的に考えてみましょう。あるパッケージ・グッズ(消費財)は、一般の量販店で販売されるのが相応しいのでしょうか、それともコンビニエンス・ストアでしょうか。あるいは両方でしょうか。パッケージの形態ひとつとってみても、この設定が大きな影響を与えることが容易に理解できます。パッケージは形態のみならずケースあたりの入り数や小分け包装単位(一般にボールなどと呼称されている)も流通の選択によって要求される内容が異なってきます。百貨店、自社の路面店、インターネットでの販売、訪問販売やカタログ販売、などなど、流通の形態は多岐に亘っています。飲料のビジネスなどでは、自販機の活用が必要になりますが、自販機を多数所有している企業との提携が有効な場合も当然あり得ます。もちろん、製品によっては、流通選択の幅が限定されることもあります。鮮度や温度管理が必要な場合はその典型でしょう。さらに営業力を認識した場合にも選択が自ずと規定される場合もあるでしょう。
高額ブランドを販売する専門店やブランド所有企業の直営店に足を踏み入れた方も多くおられることと思います。それらの小売直営店は、立地、ブランドの主張、インテリア、販売員の服装や言葉使いなどのマナー、商品陳列などのプレゼンテーションなど、ブランドのコンセプトとの整合性を容易に確認することができます。そのような企業にとって、流通戦略は、ブランドのポジションを維持する上で極めて重要な位置を占めています。
一般に、ある製品の販売量(金額)は、知名度に加えて、1店当たりの販売量(金額)と販売店数、すなわち流通のカバレージと考えることができます。単純に考えて、販売量(金額)はそれらを乗じたものとすると、1店あたりの販売量(金額)は深さ、販売点数は広がりと解釈できます。この広がりをいかに効率よく獲得し、保持するか、そして流通との関係性を維持・強化するかが流通戦略上極めて重要なことは論を待たないことでしょう。
私たちは、普段流通について考えるとき、既存の、あるいはそれまで自社がとってきた流通戦略を踏襲することが多いと思われます。多くの場合、間違いではないかもしれません。しかしながら、BPSを作成する際に、今まで述べてきたような観点から再検討しておく必要があります。極端な場合かもしれませんが、海外に進出することを考えた場合、流通戦略は最重要課題のひとつになるでしょうから、自社ブランドの流通戦略を考える場合も、流通環境の変化が激しい今日、そのような眼で流通を考えておく必要があると思います。BPSの中では、常に、選択した流通とその活用の仕方について検討を加えておく必要のある項目です。
ブランド・ヘリテージ・ラボ 代表 末包 厚喜