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TCD Branding Magazine - ブランディング Web制作 | tcd…

ヘアケアブランドの新星

今年の9月頃から、私の中で非常に気になっていたブランドがあった。皆さんもおそらく一度はご覧になったことがあるのではないだろうか。「世界が嫉妬する髪へ」という印象的なコピーとともに、赤のドレスを身にまとった黒髪の東洋人女性が、オスカー受賞式さながらの会場で スポットライトを浴びるという件の「アジエンス」のCMである。

女性向けヘアケア新ブランドということで、プロダクト自体にももちろん興味があったのだが、このブランドが気になりだした一番のきっかけというのは、コーポレートブランドがそのプロモーションからは全く窺い知れないところだった。一般的にCMの最後には、ジングルというのか、コーポレートスローガンとそのロゴがちょっとした動きと音とともに流れるケースが多い。しかしながらアジエンスに関して言えば、それが全くブラインドされていたのである。

もちろんこれだけの出稿量、香港の人気女優チャン・ツィイーを起用している事(初めは全く気付かなかったが)、加えていかにも坂本龍一らしいBGMが使われている事などから、業界トップクラスのメーカーの有するブランドだということは想像に難くなく、調べようとすればプレスリリース等が検索サイトでひっかかるだろうと推測できた。しかしながら、24歳・会社員、髪の毛のダメージが気になる私は、おそらくメーカーの想定するコアターゲットであり、それならばあくまでも一消費者の視点からその導入期を見届けよう、そう思ったのである。

ちなみにそのブラインドは徹底したもので、製品を紹介した女性向けサイトや第2弾以降のCMでも結局、製造元についての詳細は見られず、結局上市後に店頭リーフレットや商品の裏面表記において、消費者としての私は、やっと「花王株式会社」というロゴにたどり着いたのである。



コーポレートブランドを完全ブラインドするという手法は化粧品などで良く見られる。その目的はやはりその企業のもつブランドイメージから独立した新しいブランド価値を形成し、それを再び企業に還元することに他ならない。(失敗したときに、すぐ「切り離す」ことができるからというネガティブな動機ももちろんないではないだろうが)"清潔の花王"から生まれた「アジエンス」もまさにそのケースといえるだろう。

花王の既存ヘアケア・ブランドといわれてまず思い浮かぶのは「メリット」である。あのペールグリーンのボトルに懐かしさを覚えるのは私だけではないはずだ。しかし"清潔感"や"安心感"は感じるものの、正直使いたいと思うことはあまりない。もちろんそこに効果感を感じることもない。リニューアルした「エッセンシャル」「リーゼ」「ラビナス」などは比較的現代的なイメージだが、周りの女友達を見ても愛用品に至るケースは少ないように思う。

上記のブランドに共通しているのは、いい意味でも悪い意味でも"大衆性"ではないかと思う。そしてそのイメージは製造元である「花王」のブランドイメージによるところが大きい。もちろんそれがいいという人も沢山いるはずだ。しかし市場を牽引するベンチマーク・ブランドの日本リーバ「ラックス」また、最近元気な海外サロン系ブランド(同モッズ・ヘアやP&Gのヴィダル・サスーンなど)の中心購買層、おそらくこの不況下に消費を牽引する20~30代を中心とした有職女性のシャンプーに対するニーズを満たすことはおそらく出来ないであろう。

というのも、以前女性向け美容家電のブランド開発プロジェクトに何度か参加させていただいたことがあったのだが、そこで最近の若年女性(特に先述のターゲット)は、男性からどう見られるかよりも、自分自信の満足度や、親しい女友達にどう見られるかにその価値を見出す傾向にあるという話題になった。そこに求められるのは、皆に好かれる"やさしさ"だとか"安心感"というよりはむしろ"先進性"であったり"しなやかさ""強さ"といった従来の女性向商品に求められてきた感覚的価値とは、すこし異なるものであろう。

アジエンスのコア・コンセプトである「内側からの美しさ」、またそれにリンクさせた「東洋美」という切り口は、先の女性の求める新しい情緒的価値をうまく捉えたケースだと思える。「花王」というブランドをあえて遠ざけることで、これまで踏み込めなかったターゲット層に対し、最も適切な形(大量のサンプリングや広告投下などプロモーション重視の戦略)でアプローチを行ったこの「アジエンス」のブランディングからは、花王がこの商品にかける本気度が感じられる。

各社新製品発売のラッシュの中、12月初めの日経POSデータ、最新週ランキングでは、「アジエンス」が見事トップの座を勝ち取っている。シャンプー・コンディショナー含め、半年分の目標を発売後2カ月間で達成したこの新ブランドが「健康エコナ」「ヘルシア緑茶」に続く花王の第3のメガヒット・ブランドとして市場に定着するのか、その経緯をこれからもユーザーの視点から見守っていきたい。

TCDブランディングカンパニー 森山