ブランド・マネジメント雑感
ブランドについては、海外から持ち込まれた「あるべき」論が席巻していますが、各企業のブランドの構造は一つひとつの企業で異なっており、それぞれ社風や歴史を踏まえた独自の文脈性を有しているために、一律にマネジメントのあり方を論議することはできないと感じています。
本来のブランドとそれを取り巻く概念についても、産業において真に重要な存在であるならば日本においてもこれに相当するものが存在するはずで、先ず誰もが思い当たるのが「のれん」です。「のれん代=企業買収の場合に、買収価額が買収した企業の純資産額を上回る場合の差額(5年以内の均等償却としてバランスシート上に計上される)」と企業会計上の用語もあり注意が必要ですが、各々の事業における信用・信頼の象徴の意味合いを持つ本来の意味から、「グッドウィル(goodwill)」に対応する、コーポレート・ブランドの概念により近いと考えられます。そうしますと、「のれん分け」(例:藪そば、池之端藪...)という言葉についても、フランチャイズ・チェーンという事業形態としてだけでなく、「事業ブランド」とその「ブランド拡張」と捉えることもできるのではないでしょうか。また、17世紀の近江商人が「三方よし」(売手よし、買手よし、世間よし)という商売の理念を信条としていたそうですが、この「三方よし」の三角形の関係構造は、ステークホルダーの概念を彷彿とさせます。
こうした議論がそろそろ各所から出始めてきており、海外からの「受け売り」の段階から、日本の歴史に根ざした発想に摺り合わせることで、日本企業の体質に合ったブランド・マネジメントが有効になるのではと感じます。
ブランドの階層構造を考える時、原点にもどる意味で「商標」のレベルで考えてみますと、特許庁の「工業所有権 標準テキスト」には図1のチャートが示されており、上位の商標からハウスマーク、ファミリーネーム、ペットネームという懐かしい呼称分類がされています。
(図1)グッドウィルを構築する商標の例
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商号(その略称): |
トヨタ自動車株式会社 (トヨタ自動車) |
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ハウスマーク: |
TOYOTA (コーポレート・ロゴタイプ) |
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ファミリー・ネーム: |
クラウン(高級車) |
コロナ(中級車) |
カローラ(大衆車) |
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ペットネーム: |
マジェスタ |
プレミオ |
レビン、セレス |
商品を商標上特定する場合、TOYOTAクラウン・マジェスタとなるわけですが、擬人化して、トヨタ家系出身クラウンさんちのマジェスタ君と受け止めると商品のアイデンティティがより明確に見えてきそうですね。実はこうした人々の自然な認知、理解を助けるためにこそ、先ずは階層構造が整備される必要があるはずです。
実際のブランド階層は、一般的に以下の4つに分類される場合が多いのですが
1)企業ブランド(コーポレートブランド)
2)事業ブランド
3)商品ライン(または商品ファミリー)ブランド
4)個別商品ブランド
「商品」についても、モノである製品だけでなく、サービス(例:宅急便)やシステム(例:ウインドウズXP)などが存在し、一企業の事業展開においても混在していますから、かなり複雑な様相を呈しており、「マーケティング・ブランド」や「コミュニケーション・ブランド」といったアプローチも出てきていますので、モノ・コト混在の事業活動でのブランド階層を整備する必要性は、ますます重要になってきていると考えられます。
こうした状況では、切り口として、家系・家族のアナロジーを更に拡大して、識別名称という観点から、「芸名」「ペンネーム」「雅号」といった発想を「事業ブランド」や「サービス・ブランド」の在り方に当てはめても概念整理がしやすい場合もあるでしょう。
また、日本の企業ブランドを考える場合の大きな課題の一つとして、企業グループのブランド・マネジメントが上げられますが、この場合には、持ち株比率や経営影響力が優先され、市場のマインドを考慮することが少ない状況にあるといっていいでしょう。この意味では、NECグループが導入している、自立性の高い統合子会社に対して社名と市場訴求名を使い分ける「マーケティング・ブランド」というユニークなブランディング概念は評価されていいと思われます。しかしながら、欧米に比べウエットなメンタリティーを持つ国内企業の系列関係を考えますと、一般に展開できる方法であるかどうかは検証が必要かと思われます。
この意味では、国内企業グループの商号、ブランド展開を、例えば「家元制度」に照らし合わせて見るというのも一興かもしれません。
TCDブランディングカンパニー クリエイティブ・ディレクター 高橋正広