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TCD Branding Magazine - ブランディング Web制作 | tcd…

たばこも『ジャケ買い』の時代?

メンソールを中心に、たばこのブランド・リニューアルが相次いでいる。吸われる方はもちろん、たばこを吸われない方でも一度は目にしたことがあるであろう、「フーッ。」「ハーッ。」「ヒーッ。」のなんともコスミックな印象のケント・ウルトラメンソールの大量広告をはじめ、セーラム、つい最近ではホープ、キャビンなどのブランドも従来の印象からはかなり離れた世界観を様々なプロモーション手法を用いて消費者にアピールしてきている。

そんな中で商品の顔であるパッケージも、一見するとたばこかどうかわからないような新規性のあるものに様変わりしてきた。メタリックなアルミ仕様の上質紙を使ったものや、キャンペーンと連動したデザイン性の強い限定パッケージ、これまでのたばこでは考えられなかったエンボスを多用したものなど限られたスペースの中で、よりメッセージを感じさせるものへとシフトしている。これらのブランド・リニューアル共通しているのは、従来の顧客である中高年世代が健康志向にふれ禁煙の傾向にある中、次世代ターゲットにどうにかしてコミットしようとするメーカーの懸命な姿勢である。

そして今年の初め、ついにこのブランドまでもがパッケージリニューアルを含めたブランド再構築に乗り出した。いわずもがな、あの"マイルドセブンファミリー"のパッケージデザイン刷新である。新しいキャンペーンスローガン、"GRAB YOUR STYLE"とともに、従来のマイルドセブンとは大きく異なる顔に生まれ変わった今回のパッケージは、まさにJTのリリースにあるように「マイルドセブン史上最大のデザインリニューアル」である。スペックの面からも、同ブランド内で低臭気タイプの付加価値商品を投入したりと様々な角度からこのブランド・リニューアルを支援している。

簡単にそのデザイン変更の内容に触れると、白地を貴重とした旧パッケージに対し新パッケージではそれぞれのタール数に応じたブルーがその背景色として用いられ、全体を見渡したときにアイテム間にグラデーションが生まれるように設計されている。そしてマイルドセブンを象徴してきたこれまでの左側の縦帯に代わる役割を担うのが、パッケージ上中央にあしらわれたマイルドセブンの"M"と"S"をデザイン化したシンボルマーク、通称"ブルーウインド"である。(ちなみにこのマークがどうしても某スノースポーツメーカーのマークに見えてしまうのは私だけではないようだ)雑誌か何かのリリースで初めてこの新デザインのパッケージを見たときの第一印象は、「軽くて、スマート」。男性的とも女性的ともとれないこのパッケージからは、次世代のターゲットを意識した新しいブランドコンセプトへの忠実な帰属が感じられる。だかしかし、である。少なからず私の周りの喫煙者にはこのパッケージデザインのリニューアルは不評に終わっている。

まず言われるのがアイテム間の機能的な「わかりにくさ」である。マイルドセブンブランドの確立を第一義に、アイテムを基本フォーマットに当てはめ、それぞれの喫煙感覚によってその違いを表現するという処理は理屈としては正しいと思う。しかしながら、"エクスストラライト"と"ワン"などは一見したときに正直見分けがつかず、徹夜明けや飲みすぎで意識が朦朧としている時に自動販売機で誤って購入する喫煙者がおそらくいるはずである。(実際にそういう人が私の知り合いにもいた)もう1つはマイルドセブンの持つ従来のブランドイメージとのあまりに大きい違和感である。非マイルドセブン愛好者がこう言っているのを聞くにつけ、マイルドセブン愛好者にとってはおそらくそれ以上の戸惑いがあったのではないかと推測する。たばこは嗜好品であるため、一般的な消費財に比べそこにまつわる「思い出」は深い。喫煙者ならば、初めて吸ったたばこの銘柄や、愛用するたばことともにあった時間は記憶として蓄積されているだろうし、喫煙者でなくても、そのとき自分の身近にいた人が吸っていたたばこのにおいなどなんとなく意識の隅に残る。ちなみに私がマイルドセブンといって思い出すのは"おつかい"だ。私の父は以前喫煙者で、小さい頃によくおつかいでマイルドセブン・スーパーライトを買いにいった。自分が手にするたばこは、まぎれもなく「大人のためのもの」で、なんとなく子供の自分がもっていることに道すがらどきどきしたものだ。そこには確かにパッケージのデザインから受けるイメージもがあった。シンプルで、男性的な強さをもつこのデザインが個人的にキライではなかったのだと思う。国民的たばこブランドであったマイルドセブンは、このような消費者との記憶の絆をそのデビューから現在に至るまで着々と育ててきたのではないか。

セルフ・メディケーションという概念が人々の意識に根付き始めたことや煙草に関する規制が全世界的に強まる中、新たな顧客獲得のために既存ブランドを再定義するということはもちろん正しいことだと思う。新ブランドであれば素直に受け入れられたのかも知れないが、既存ブランドのリニューアルの際に、これまでそのブランドを愛してきたコア・ターゲットといえる人々の気持ちを汲むブランディング、ひいてはパッケージでのブランド資産の表現がおざなりにされてはいないだろうか。マイルドセブンに限らず時代にフィットする形にとおさめられたこれらのパッケージデザインが、消費者にとっての単なる「ジャケ買い」で終わるのか否か、10年後このパッケージがブランドの顔としてなんらかの形で生き残っていくのかを、今後のたばこ産業の行く末とともに見守りたい。

TCDブランディングカンパニー 森山