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今号の「ブランド・フォーカス」より、当カンパニー嘱託ディレクター、新村佳史による『ブランディングの社会学』の連載がスタートです。独自の社会学、文化人類学の視点を活かした刺激的なブランド論を展開してまいりますので、引き続きご愛読ください。
| 新村 佳史 TCDブランディングカンパニー 嘱託ディレクター オフィス・ハドルタイム代表 1960年生、京都大学卒。学生援護会にて求人情報誌の編集などに関わった後、フリーのライターとして独立。若者文化論(特に大学文化、進学、就職など)、 教育問題、スポーツ、関西文化などを中心に執筆・講演活動を続ける傍ら、 大学広報や企業のマーケティング、商品開発などのコンサルティングを中心に 活躍中。日本広報学会会員。 |
少し長い自己紹介から
今回から12回にわたって私なりのブランディングについての考え──ことにメディアの活用と、世代ターゲットを絞り込んだ具体的な方法論についての私論を展開させていただくことになりました。よろしくお願いします。
私は企業人でなく、また学者でもありません。民間シンクタンクの契約研究員、専門学校の講師、広告プランナー、スポーツライター、教育ジャーナリスト、社会学(広報学)の研究者、調査報告書のアンカー、放送作家など、接する人により「何者か」という見方が変わるという人間です。自分自身のブランドが全く確立されていない人間と言えそうです。社会人としては失格です。
ただ私は生涯をアマチュア──学生として過ごしてやろうと思っているので、今の自分の位置は気に入っています。様々な人から学習課題をいただき、それにレポートを提出する。レポートに求められるのはアマチュアならではのプロと違う視点からの考えであり、それが結果として仕事となっているようです。
この学生歴四半世紀の私が、とりあえず専攻領域として選んでいるのが教育・就労をベースとする若者文化であり、その切り口として主に利用しているのが社会学と統計学です。ただしあくまで「学生」ですから曲解している部分もありますし、時には衒学的な立ち回りで採点者の目をくらまそうと試みることもあります。この分野のプロパーの方から見たらたわごとにしか聞こえない部分も多いかと思います。くれぐれも信用なさらぬよう、ご注意ください。
今のデータを読むために必要な素養とは
さてこの数年、大手広告代理店を中心に、企業に対するブランディング攻勢が始まっています。これからの時代、生き残るのはブランド力だ、と。あるいはカネボウの再生問題でも見られるように、ブランドそのものの価値が企業の財産である、だからそれを正確に測定しよう、作りましょうというような。
企業ブランドの価値測定と言うと、企業規模、過去の売上げ実績、収益率や成長率、カテゴリーリーダーの商品の存在、企業理念、労使関係、企業が存在する国家の政治的安定、そしてそれらからコンシューマーの間に生み出される信頼感を軸とした企業イメージなどをまず測定するのが常です。さらにこうしたものの集積から作られる株価という指標。つまり、過去のデータをベースに若干の未来の可能性を加味したもので企業のブランド価値を測定しようとしてきました。
ところがこの15年ほどの間に、東側諸国の混迷や日本のバブル景気とその崩壊、その後のアメリカのITバブルと低迷などの混乱を──大企業の崩壊と、瞬時に生まれる世界的企業の成長を目の当たりにしたわけです。これはどうも実績をベースとする企業論ではうまく語れない、現在の歴史はほんの数年前のことを一気に現在と切り離すような動きをする、過去の実績を判断素材とする分析ではうまく説明しにくいぞ、ということになり、かなり慌てて「現在の傾向分析」のために作られたのがブランディング理論ではないかと私はにらんでいます。
その理論のベースとなっているのはもちろん、行動科学です。心理学、社会学、人類学をミックスした上に統計処理(情報科学)で徹底的に裏付けをつけていこうという姿勢を見せるもので、1950年代からアメリカが必死に取り組んできた分野です。早い話が人間集団の行動特性を状況ごとに分析し、今の傾向と対策を練るというもの。コンピュータの発達と、感覚を数値化する統計処理技法の進歩によって、人々の行動やその動機の分析、また同じような行動傾向を示す人のグループ分けなどがかなり細かくできるようになりました。クラスター分析のマトリックス図などはイメージ戦略に欠かせないものとなっています。この手法を企業や商品イメージ測定に取り入れ、数量化手法によって得られた数値を、ブランディング理論は非常に重要なものとしています。
ただ、この手法は、質問紙の作成、調査対象の文化的態度の予測を間違えると、とんでもないお馬鹿さんデータになる危険があります。分析者は文化とはなにか、人は何に価値を感じるのか、集団の属性の規定要因は何か、という知識をかなり求められます。変わる時代、変わる世代に対しても価値があると思いこませ続けるブランドは、実はブランドそのものが日々どこか変化しているから対応できているのではないか、という疑いが必要となります。
そこで引っ張り出されたのが、文化人類学や社会学です。1960年代のフランスでさんざん練りこまれ、80年代の新人類が引っ張り出した理屈の復権です。まあ代理店シンクタンクの中堅研究者が昔齧ったものにすがりついたという感じですが。ただモノと情報と自己存在の対比という問題意識(暇を持て余す学生の得意分野です)がブランド作りに必要な「コツ」と見なおされ始めたのです。
では、そのコツの実体は?本当にあるのか?そんなことを次回から、特にメディアと新たな世代の関係性に注目しながら、具体的に考えていきたいと思います。よろしくお付き合いください。でもくれぐれも、ご信用なさらぬよう。