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"日本"というブランド(2)

ロンドンでは、WAGAMAMAというレストランの他にもいくつかの"日本食 "ビジネスが見られました。例えば"Gili Gulu"は、Monmouth Streetにある回転寿司の設備を取り入れたファッショナブルな内装のJapanese Restaurantですが、たまたま通りがかりに見かけ、ガラス張りで店内の様子が見通せたため、好奇心から夜に出向きました。

ガイドによれば
Gili Gulu offers an excellent deal: Eat as much as you like (noodles, sushi, sashumi原稿のまま) for £13 or set-menu 1 which includes 5 plates and miso soup or set-menu 2 which is 2 plates and a bowl of noodles for £7.
と紹介されています。

またまた「日本人以外の客」で満員の盛況で、パーティの流れかカクテルドレスで両肩を露出した若い女性もちらほら見える。店のスタッフは全員白い制服のアジア系で日本人ではない。私を見てにこりともしないどころか、迷惑そうな曖昧な表情を浮かべているように感じたのは、私のひが目でしょうか。目の前に流れる皿にはごく少量が盛り付けられ、いなり寿司など日本の惣菜もありますが、春巻き、ほうれん草をカリッと鳥の巣のように揚げたものなど中華やエスニック料理が混在しています。味噌汁も明らかにインスタントのもので苦笑いするしかなく、早々に退散した次第です。このレストランも、経営者も調理人、スタッフも日本人ではなく、日本人以外の客をターゲットとして人気があるようです。2店目が開店予定と聞きました。

あちこちの通りにあるファースト・フード・ショップでもサンドイッチなどと並んでSUSHIとウインドウに大書きされ、通りに面したカウンター席では、コーラと一緒に日本のスーパーで売られているような透明プラスチックのパックに入った「海苔巻き」のようなものをつまむ若者の姿をよく見かけました。

おいしくないと定評(?)のある英国料理事情からでしょうか、ロンドンなどの都市部では古くからのインド料理を筆頭に様々な他国文化の料理が盛んになった末に、ファースト・フードの気楽な領域まで「日本食」を取り入れるに至ったのが最近の傾向といえるようです。

英国の若手シェフとして料理番組で人気のあるジェイミー・オリバーの料理にしてもベースはイタリアンですが、日本も含めたエスニックのアイデアを創作的に取り入れた「気の利いた」レシピが売りとなっています。

海外での和食レストランが、日本文化を伝道するといった意気込みの格式高い高級店と駐在員が通うこじんまりした定食屋さんに二極化されたすき間に、カウンター・カルチャーとはいえない、結構大きな資本が、周到なマーケティングをもとに「日本ブランド」を使った食ビジネスにのりだしていると感じます。

「和食」というほど日本文化のアイデンティティは強くないが、「健康的でファッショナブルな日本の食べ物」というイメージが「日本食」という記号に記号化されて使われている、つまり「ニホン・フード」の商標化といっていいかも知れません。狭義のブランド(商標)の3つの機能としては、 1) 出所表示  2) 品質保証  3) 広告宣伝がありますが、各々についての応用が、 1) 日本からきたものである(らしい) だから、  2) 品質はいい(ようだ) そして  3) クールでカッコいい目新しさとしての広告宣伝効果は抜群 ということになるでしょう。言ってみれば「もどき」なのですが、残念ながら「日本文化」は商標登録ができませんし、日本人に独占使用権があるわけでもありません。だから日本人にはできないし、日本人を対象としていない。

「"日本"というブランド」と表題をつけましたが、世界に行き渡った日本製品のように、新たなフェーズで「日本食」が浸透し始めている状況は、文化的アイデンティティの価値というより、文明的(ブランド)価値を利用しようといった文脈で「日本」が消費され始めていることを意味するのではないか、と思いを巡らした次第です。



Gili Gulu
回転寿司スタイルのレストラン。店内中央には2階への螺旋階段がセットされている。
回転寿司スタイルのレストラン 店内中央には2階への螺旋階段がセットされている



"アメリカ"ブランドともいえるコカ・コーラ ピカデリー・サーカスのネオン・サイン

赤の背景の白抜きロゴが殆ど表れない(!)世界で最も認知度が高いといわれるこのブランドは、記号化の度合いが大きく様々な表現に対応できると考えられます。しかし、「豊かさ」の象徴であるアメリカ文明(文化というより)を消費したいと感じてコークを飲んでいる人がいない市場では、コーポレート・ブランドイメージを一律に繰り返しても訴求効果はないともいえます。

TCDブランディングカンパニー クリエイティブ・ディレクター 高橋正広