2004年ブランド本の'ベスト・バイ'は?
2004年も残り僅かである。毎年この時期になると、筆者は今年1年間発行された本を振り返ることが習慣になっている。当コラムはブランドがテーマなので、2004年のブランドに関する本を概括してみたいと思う。
某大手書店のWEBサイトの書籍検索を利用させていただいた。「ブランド」で検索してみると、2004年1月~12月までで91冊がヒットした。勿論この中には「世界の一流品」のようなブランド品紹介の書籍も含まれている。そこでビジネス書籍だけ取り出してカウントすると21冊になった。
経営やマーケティングのキーワードとしてブランドが注目を浴びるようになって5~6年が経過した。数年前に比べると、ブランド指南書の発行ペースは落ち着いてきたと感じられる。また「反ブランド講座」というタイトルのものが出てきたように、ブランド本は明らかに成熟期に差し掛かりつつある。

こうした2004年でブランド本の'ベスト・バイ'を一冊選べと言われれば、迷うことなく『ブランド価値を高めるコンタクト・ポイント戦略』(スコット・M・デイビス、マイケル・ダン著 ダイヤモンド社 2400円)を推薦したい。この本では、顧客とブランドが出会うあらゆるポイント(=これをコンタクト・ポイントと呼ぶ)を効果的に管理する手法を紹介している。
具体的には顧客がブランドを体験するフェーズを
1)購買前体験
2)購買体験
3)購買後体験
の3つに分類し、緻密にプログラムされた「最高のブランド体験」を提供していく実践的なメソッドを体系的に整理してくれている。
特にこの本が素晴らしいと感じるのは、3つのフェーズのうち「3)購買後体験」についての部分だ。市場成熟・同質化競争が進む今日、既存顧客の維持や顧客との関係性強化が重要なマーケティング課題である。継続的に自社の製品・サービスを利用し続けてもらうことが必要になる。
これまでのブランドの教科書では、顧客との関係性を強めるためには顧客の志向性を理解したリコメンドやマイレージプログラムによる利益供与をすすめている。確かにこうした施策は一定の効果があるだろう。しかし本質的に顧客が望んでいるのはこんなことなのだろうか。
この本では、顧客関係性を強化するための企業側の目標の第一は「購買決定の正しさを確認させること」と指摘している。ブランドの約束を実感・体感してもらい、顧客と感情的に結びつくことが必要ということである。
例えばWEBサイト。筆者は情報収集のツールとして活用するよりも、製品・サービスを利用後に何度もサイトを来訪している。自分が購入した車のサイト、旅行で訪れた温泉旅館のサイトなどは繰り返し見ている。これはなぜかと考えてみると、購買・利用という自分自身のジャッジメントを正当化したいという心理が強く働くからだ。
だからリコメンドやマイレージよりも、まずはブランドの世界観・コンセプトを再確認する「場」を提供していかなければならない。こうした視点からWEBサイトやショールームといった自社メディアの再点検を行う必要がある。
このような購買前、購買、購買後と包括的にブランド体験を提供していこうとする考え方は「ブランド・エクスペリエンス」と呼ばれている。TCDブランディングでは、この「ブランド・エクスペリエンス」をベースとしたブランディング・サービスを展開している。お気軽におたずね、ご相談賜れば幸いである。
TCDブランディングカンパニー プランニング・ディレクター 生山久展