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TCD Branding Magazine - ブランディング Web制作 | tcd…

総括

早いもので、2004年もほんの数日を残すのみとなりました。年の締め括りにあたって、ここまで書いてきたことをまとめておきましょう。

まず、ここで論じているのは、今までの「現状の消費者をデータで分析して、そこから消費行動を導き出し、価値観をどう与えるか考える」のではなく、「次代の変化を社会学的に予測し、これからの社会階層がどうなるか、消費者の行動はどう変わるかを想定しよう」というものです。つまり、大きな仮説をまず作り(社会学でいう理念型ですね)それを調査で検証し、その結果をマーケティングやブランディングに反映させようと言うものです。


ここまで述べてきた、1980年代以降の日本社会の大きな変化は、新階層社会の到来と言うことでした。具体的には、
  1. 学歴と親の収入の連関が深まり、学校が階層の拡大再生産装置となった。

  2. 同時に企業も勝ち組、負け組の差が拡大し、所得格差が増大した。

  3. その中で、メディアや公立学校、サービス業を通して、「夢を持たず、とりあえず過ごす」毎日が受け入れるべき日常という階層が生まれる。

  4. 結果、学校による上(エリート)中(中級技術職&中間管理職候補)下(とりあえず)と独自型(学校に適応しない肉体労働主体型)の4クラスに大きく分類される。

  5. こうしたクラス分類は1980年代生まれ前後の世代から特に助長される。というものです。

さらにここ数年の税制改正の流れは、この4分類の「中」に非常に厳しいものとなり、消費行動を考えると、購買力のあるのは一部のハイクラスと、独自型の上下2つのクラスとなっています。


独自型の場合、家を買うとか教育費に支出するといった傾向が無く、また給与所得者と比べて税金を完全捕捉しにくい、さらに(きつい言い方ですが)借金を恐れないという生活態度があり、意外と高額商品を購入しています。それはさておき、これからの商品開発を考える上で重要なのは、「標準世帯」などの中流モデルを想定することの意味の低下です。

所得分布、さらに可処分所得分布は、中央が高い正規分布曲線から、平坦で下が厚い形へと急速に変化していきます。その中で、まずどこのラインを狙うのか、ターゲットを絞り込むマーケティング&ブランディング戦略が重要となります。と言うより、まずトップに受け入れられるモノ作りが重要となります。

厳しい言い方ですが、トップと独自型以外には、流行やブームを作り出すのは難しいのです。一見、最もメインに見えるミドルおよびその下には、文化的な余裕が持てないのです。上か下(独自型)で流行しているものを、なんとか安くもってこられるかどうか、なのです。お嬢様か、ヤンキーか。少女雑誌のファッションを検討していくと、ミドルのトンガリだったデザイナー系の衰退と、金持ちか独自かの2極分化がはっきりと見て取れます。

ただし、面白いのは、お嬢様ファッションがやたらと高いか、というとそうでもないところです。時計やコート、バッグなどはとてつもないブランドが並びますが、シャツやメイク用品などには安いものも多いのです。学歴階層化の中で育った新エリート層は、成金タイプとは違うのです。「親がすすめる良い物」を選ぶ。「良い物」志向が強いのです。

では、良い物とは?まず圧倒的な質の良さ。耐久性、安全性の良さ。その結果としての財産性の高さ。リセールバリューの高いモノを求めているのです。コレクターズアイテムや限定品ブームは、このリセールバリューの高さを求めてのものです。ヴィトンの圧倒的な強さも、ヴィトンなら売れる、からです。そして事実、ハイクラスから他のクラスへと流れることで、ブランドの価値は高まります。

トヨタのセルシオが、過剰とも言われる品質管理のもと、耐久性を売りにしたのは正解でした。「中古車市場で値段が落ちない」ことが、ベンツに負けないステータスを国産車で初めて作り出したのです。

トップからミドルまでを狙うのではない、しかし、結果としてトップが選び、消費したものがミドルで再消費される。それが、新階層社会での商品開発の大きなポイントとなると私は考えています。


TCDブランディングカンパニー 嘱託ディレクター 新村 佳史