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ムシキングはブランドキング?

「甲虫王者ムシキング」というゲームをご存知でしょうか。カードで対戦するセガの大人気ゲームですが、小学生のお子さんがいらっしゃる方ならご存知の方も多いと思います。「ムシキング」は、外国産のムシから森を守るために、ゲームの参加者が妖精ポポとムシキング(カブトムシ)たちとともに戦い、外国産のムシが暴れ出した謎を解くことがストーリーの主軸ですが、テーマに外国産生物の増殖という環境問題までを含むあたりが、現在っぽく興味をひかれました。ここ数回の当連載でブランド・エクスペリエンスについて掲載しましたので、その流れで、今回は「ムシキング」を題材に話をしようと思います。



最近、近所に複数店あるローソンにムシキングのゲーム機が置かれるようになりました。いつ見ても、子供たちが列をなして画面を覗き込んでいます。「ムシキング」がいかにして、この少年たちの心を掴み続けているのか、その謎を解くために、私はさっそく公式ホームページを覗いてみました。

ホームページで、まず目をひいたのが、大会情報です。各都道府県で毎月1回から数回の大会が開かれ、多くの大会ではエントリー資格を小学生以下に限ることで、小さな子供にも優勝のチャンスが与えられる仕組みになっています。また、初心者向けの大会やペアでの大会もあり、そういった大会で勝ち残った参戦者が上位大会を目指し、ますますムシキングにのめり込む構図が目に見えるようです。

また、プレゼントのページを開くと、すでに持っているカードを再び引き当てた場合は、30枚集まった時点でセガに送り返せば、ムシキンググッズと交換してくれるシステムが紹介されています。子供を引き込み、(たとえカードが重なっても)がっかりさせない(と、同時に「カードが重なってもいい」と安心して親の財布を緩める)仕組みが散りばめられているわけです。



さて、コンタクト・ポイント(顧客とブランドが出会うあらゆるポイント)をまとめるときは、「その商品のコンタクト・ポイントには何があるか」、「顧客は各コンタクト・ポイントをどのように体験しているか」の2点が中心となりますが、それをムシキングに当てはめると、以下の表1の通りになります。前号で「ブランド・コミュニケーションの究極の目的は、そのブランド固有の文化や世界観を伝え、経験してもらうこととされている(岡田)」と記しましたが、以下の一連の流れを通じて、子供たちは意識しようとしまいと、まさにムシキングを経験し、理解を深めていくことがわかります。

(表1)ムシキングにおけるコンタクトポイント
コンタクト・ポイント ムシキング(※購買前体験に関しては割愛)
カードの受け取り ゲーム機に100円を投入すると任意のカードが出てくる。「ムシカード」と呼ばれる昆虫カードと、技を繰り出す「わざカード」の2種類を組み合わせて甲虫同士を戦わせる。
ゲーム内容、対戦 リアリティと迫力あるムシのバトル映像及び愛嬌のある主人公が登場。簡単なじゃんけんで勝敗が決定。友人との対戦も可能。ゲーム機を通さずに、カード単体でのゲームも可能。
ゲームの難易度、持続時間 難易度の高いコースと低いコースを用意。平均4分ほどのプレイ時間。
カードの収集 毎シーズンごとに100種類程度の新カードが登場。通算出荷総数は1億枚以上。カードフォルダーに入れて保存。
HPでの攻略法情報収集 HPでは攻略法が紹介され、ネブ博士と呼ばれる男性がカードの使い方を指南。
大会への申し込み 各都道府県で毎月1回から数回の大会が開催。現地での当日エントリー可能なこともあり、大会の回数も多いので気軽に出場できる。
大会への出場 ビギナーズ大会や、参加を小学生以下に限った大会などが多く、年少者にも優勝のチャンスが多く用意されている。
HPでの大会の対戦結果の確認 優勝者と準優勝者は写真とコメントがHPに掲載される。
大会での優勝者用のカード授与 公式大会で優勝すると優勝者認定証を付与され、規定数の優勝認定証を集めると、名前が刻印されたグレイテストチャンピオン認定証を申請可能。
余剰カードの交換サービス 同一種類のカードを引き当てた場合は、30枚を一口として事務局に送付すれば、ムシキンググッズと交換。
HPでの関連グッズ販売 カードフォルダー、ムシキングフィギュア、文房具、ランチボックスなど豊富な種類の関連グッズがHPで購入可能。またゲームボーイ用のソフトもある。
問い合わせ電話番号と
Eメールの設置
あらかじめFAQを用意し、その上での問い合わせには電話とEメールで対応をおこなう。

今回の「ムシキング」に関して言えば、カードを集めたり、ゲーム機に向かって挑戦するだけではなく、それを大会でリアルに体感でき、ホームページに写真までが掲載されるという購買後のコンタクト・ポイント設定の幅広さに驚かされました。中でも、ビックリマンチョコのカード集めに夢中になり、同一カードを引き当てたときにがっかりした世代の私には、余ったカードをグッズと交換できるというシステムはかなり魅力的に見えました。



ブランドを最大限伝えるためには利用可能なコンタクト・ポイントはすべて検討することが求められますが、「ムシキング」の世界には、以上のように多くのコンタクト・ポイントが能動的に導入され、効果的に運用されています。こういったコンタクト・ポイントをいかに設定し、対応するか、子供向けゲーム機からも学べることは多いようです。



参考文献:スコット・M・デイビス、マイケル・ダン著(電通ブランド・クリエーション・センター訳)『コンタクト・ポイント戦略』ダイヤモンド社、2004年

TCDブランディングカンパニー 柿原真実