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"エレガンテ"な大衆?

先月、いつもの見慣れた通勤風景の中、突如、目に入ってきた巨大広告があった。細身のスーツを着た甘いマスクの外国人男性の姿と、「40才、オトナを遊びつくす」というキャッチコピー。

集英社から新たに創刊されたライフスタイルマガジン『uomo(ウオモ)』の広告だった。行けども行けども、追いかけてくるように張り巡らされている広告。街を歩けばuomo。電車に乗ってもuomo。本屋に行けば当然のごとくuomoが列をなして平積みに...。宣伝費のかけ方と、発売日を、(「ちょいワルおやじの作り方」のコピーで既におなじみになった)主婦と生活社の『LEON』と重ねた点から、集英社のuomo創刊にかける意気込みに期待を抱くと同時に、すでに飽和状態となっている男性誌・ライフスタイルマガジン誌をなぜ今、新たに創刊するのかという疑問も抱きつつ購入した。

uomoの表紙を飾るのは "上質なオトナ"のスペイン人モデル、アンドレ。"エレガンテ"にファッションやグルメ、旅行などのライフスタイルを提案している。改めて新聞広告を見ると、『独創的で力強い美しさ。質実に裏打ちされた完成度。その本質を直感的に知り、楽しむこと。自分にふさわしい存在を知り、自らを磨いていく。そんな上質のオトナをuomoは"エレガンテ"と呼びます。』とある。コンセプトは優雅なオトナ生活の提案ということなのだろう。ターゲットは40代だ。

しかし、である。バブル時代に消費を謳歌した40代の多くは、現在、家庭を持ち、uomoに掲載されているような高級ブランド品を購入するような費用をそう多く持っているとも思えず、また、メインターゲットとしている一部の富裕層に属する人物は既に個人のライフスタイルを築き、今更、ファッション雑誌でライフスタイル形成のためのノウハウを学ぼうとする人も多くはないはずだ。

ここにコンセプトとターゲットに大きなギャップを感じざるをえなかった。

私が集英社に抱いていた企業イメージは"大衆性"である。『少年ジャンプ』、『non・no』などコミックにしろ、ファッション誌にしろ、子供のころから常に誰かが集英社の雑誌を持っており、子供ながらにカジュアルでフレンドリーな出版社、という企業イメージを持っていた。そして、そこから、決して主張しすぎない、けれども確実にニーズを吸い上げた情報発信をする姿勢や編集方針を感じていた。

少子化の波で廃刊に迫られるコミック誌が多い中、今も『少年ジャンプ』はコミックのキングとして存在し、ヒットアニメ作を輩出しているし、また、昨年の秋に創刊された女性向けのビューティーコスメマガジン『MAQUIA』は創刊から僅かな時間でコスメマガジンの粋を越えて、雑誌そのものがブランド力を持ち始めている。憧れのライフスタイルをおくる著名人のトークショーの開催、掲載商品を自由に試せるサロン『集英社ビューティーハウス』のオープンなど、ビューティーをキーワードにしたライフスタイルの提案を演出している。コスメマガジンの扱う範囲を、コスメ商品だけではなく、コスメを通じたライフスタイルの提案にまで広げた編集方針が大きなブランド力を持つ要因になっていると考えられる。また、そこからは、企業からのコミュニケーションを感じることもできる。

では、uomoはどうか。誌面ではuomo的な人物の具体像として、メインモデルをお手本(?)にしたファッションから恋愛にいたるライフスタイルの紹介がされている。しかし、その掲載商品や構成は、かつて、男性ファッション誌の中で圧倒的なブランド力を持っていた『Men's non・no』のそれを高級品にしただけのような印象を受ける。

そもそも、"エレガンテ"なライフスタイル提案と大衆性というのは相反するものである。大衆性を付帯しつつも、富裕層の購読を狙ったコンセプトがそのような印象を持たせているのではないだろうか?

所得格差の拡大が進み、消費が二極化するマーケットの中、集英社が富裕層の40代男性をターゲットに創刊に乗り出したことに、かつての企業イメージを薄め、ピンポイントにターゲットを絞ろうと手探りを始めたような印象を受けた。

だからこそ、創刊されたuomoには"エレガンテ"というコンセプトにとどめてほしくなかったという思いがある。今現在、創刊2号となる5月号が発売されている。創刊号は売れ行き好調だったと聞いているが、今後の販売結果が今後のuomoの行方の鍵を握っていると言えるだろう。

TCDブランディングカンパニー 瀧本