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歌うアイスクリームショップ

寒空の下、どこからともなく歌声が聞こえてきました。聞こえてくるのはどうも目の前のアイスクリーム店から。ここからは、透明のショーケースに入ったおいしそうなアイスクリームとカウンターに並んだトッピングのフルーツやナッツ、チョコレートが見えます。そして、その後ろには横長の冷えた石板。そこで、数人のスタッフがアイスクリームとトッピングをリズムにのって混ぜ合わせながら、楽しそうに歌っているようです。


ここは、先月、アメリカから上陸したアイスクリームショップ「コールド・ストーン・クリーマリー」。1988年にアメリカで生まれたこのアイスクリームチェーン店は、2005年には世界1100店舗まで拡大し、11月にアジア第一号店として東京・六本木ヒルズに進出しました。開店した際に、行列ができている様子をニュースなどでご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、私も先日、遅ればせながら体験して参りました。驚いたのは待ち列の長さ。開店から1ヶ月以上経過した現在でも、1時間程度待たされるほどの人気店です。

味だけなら、定評のあるハーゲンダッツに行けばすみますが、この店が多くの人を集める魅力はそのサービス。スタッフが歌を歌いながら、客のオーダーに合わせて多様なトッピングを混ぜ合わせてアイスクリームを目の前で「創り出して」くれます。できあがったアイスクリームを「クリエーション(創造物)」と呼んでいるように、単にアイスクリームを販売しているのではなく、最高の「クリーマリー体験」をお届けするという姿勢が徹底されています。

「クリエーション」のボリュームもアメリカンサイズを少し小さくしたくらいで、持ってみるとズッシリと重みがあります。商品名も「モンキー・バイツ」や「アイランド・ライフ」といったようにストレートすぎないものが使用されており、興味をかき立てられます。ワッフルコーンももちろん店内で焼き立て。トッピングの種類もキットカットやスポンジケーキからいちごやバナナまで圧倒的なバリエーションが用意されています。御影石の上でオーダーに合わせてリズミカルにトッピングとアイスクリームを混ぜ合わせたり、スタッフが歌を歌いながら作業を行なったりと、非常に高度なホスピタリティとエンターテイメントがそこでは展開されているのです。

さて、フードショップの選択において、消費者は「経験」を重視する傾向が強く、ニューカマーへトライアルさせるだけの「エビデンス=証拠」をしっかりと示す必要があります。このコールド・ストーン・クリーマリーに関しては、六本木ヒルズという地の利に加え、アイスクリームという昔からある食材に付随するサービスを、これまでになく「可視化」したことが現在の人気の要因であると言えるでしょう。味や価格での明確な差別化が難しい現在、最高のクオリティは追求しながらも、トータルな購買体験で勝負をかけた最初のアイスクリーム店ではないでしょうか。私自身、列に並んでいる間、スタッフが歌いながらアイスクリームを創る姿を見ようとお客さんが背伸びをしている姿や、必要以上にトッピングを注文してしまいアイスクリームを食べるのに四苦八苦している様子を何度も見かけました。お客さん側に自然と最高の「観客」を演じさせてしまうだけのパワーがあるのです。

外資系の飲食店といえば、数年前のスターバックスの急速な店舗展開を思い起こす方も多いと思いますが、スターバックスのように「暖かさの提供」という日本文化と当初から相容れそうな業態ではなく、スタッフが歌いながらボリュームのあるアイスクリームを混ぜて提供するというアメリカ文化をしっかり継承しているコールド・ストーン・クリーマリー。六本木ヒルズというフードショップの激戦区から、どこまでこの人気を発展させることができるのか気になって仕方ありません。

コールド・ストーン・クリーマリー
http://www.coldstonecreamery.co.jp/

TCDブランディングカンパニー 柿原真実