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最近、プレゼントとして友人からBMWのミニカーをいただきました。いわばBMWのおもちゃなのですが、BMWは自社製品のミニカーを玩具メーカーにOEM生産させていて、BMW車を忠実に再現できるメーカーを世界中の玩具メーカーから選んで生産させていると聞きます。そのため、ケースにはしっかりとBMWの刻印が押してあり、その完成度は実車さながらです。
BMWは世界で最も成功しているブランドの一つであると言われていますが、その理由としてBMWのマークがついている商品はたとえそれがミニカー1台であっても、自社で徹底した品質のコントロール行い、一貫して「BMWは退屈なものを作らない」という約束を守り続けているところにあると思います。その思いは、1970年代半ば以降ずっと変えられることなく「究極のドライビングマシン」(日本語訳:駆け抜ける喜び)というコーポレートスローガンに込められ、現在でも世界中で使用されています。
言うまでもなく、BMW車の性能は、「究極のドライビングマシン」として国内外の専門家や顧客から絶賛されている訳ですが、私がBMWブランドに注目する理由は、そのブランド・コミュニケーション能力の高さにあります。「いかにブランドの価値を魅力的に伝えていくのか」ということにBMWは非常に長けた企業であり、以下にご紹介させていただく広告コピーの一部からもBMWのコミュニケーションのうまさが見て取れます。
この広告は、人生に多くのことを求める、何一つ譲らない情熱的な大人たちがコンセプトになっていて、人間の心の中に共存する欲望を、対象的なコピーを繋げる"but(~が)"という言葉が表現しています。
大人の哲学を持ち、子供のような純粋さを持つ人。
主流なのに、心は反主流である人。
スーツを着こなすが、ジーンズもはきこなす人。
寡黙ではあるが、説得力のある人。
人生も語れるが、ジョークもうまい人。
有意義も好きだが、無意味なことも好きな人。
後部座席にも座るが、ステアリングも握る人。
ワインにも詳しいが、恐竜にも詳しい人。
常識は持っているが、決して縛られない人。
ITに強いが、手紙は万年筆でかく人。
家庭を愛しているが、時には家庭を忘れられる人。
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専門書で調べてみたところ、BMWの顧客は「3分の2が男性」「平均年齢46歳」「高年収」「高学歴」「既婚」「子供なし」という属性を持つ人が大半であり、さらにサイコグラフィック分類から、彼らは「リーダーシップに溢れ」「よく働きよく遊び」「活動的で日々運動を怠らず」「自分に対しても他人に対しても要求が高い人」であるという調査結果が得られたと記載されていました。まさに上記の広告コピーに描かれているような人達がBMWのコアなファンということがわかります。さらに、同じ自動車業界において広く富裕層をターゲットにしてプレミア感を押し出すベンツやレクサスと比べて、BMWがターゲットにする顧客層は、富裕層の中でも限られた属性を持つ人たちに絞り込まれていることが推察できます。つまりBMWはあくまで「本物」=「究極のドライビングマシン」というブランドイメージを体現するために、製品の細部にまでこだわりを持ち、あくまで本物にこだわり続ける特性を持つ人々の心にダイレクトに響くような言葉で、ピンポイントでコミュニケーションすることが要求されています。
私が上記の広告コピーを始めて新聞広告で目にしたとき、「BMWに乗るのはこういう人だ。」と言っているようで非常に強気な印象を受けたのですが、一方でその背景にある「本物」というメッセージを、顧客の共感を生み出す言葉で伝えているところにBMWブランドの一貫した姿勢を感じました。最近市場投入された新型Z4の広告には「スポーツカー それ以上、以下でもない」というコピーが打ち出されています。
すべてにおいて完璧に見えるBMWですが、私が一点課題をあげるとすれば店舗ではないかと思います。先日も銀座にある「BMW Pulse」という、BMWが提案するライフスタイルをトータルに体感できる、自動車業界では珍しいブランドショップに行ってきました。はじめは、ディーラー(販売店)ではなくブランドショップを自動車会社が展開していることに、非常に期待して足を運んだのですが、最新モデルの展示車が置いてあるだけでがっかりしてしまいました。キャンペーンやイベントを行っていなかったからなのか分かりませんが、あまりにもプロダクト(自動車)に頼りすぎている展示になっていて、ディーラーとの違いが何なのか伝わってこなかったのが残念です。店舗において購入前、購入時点、購入後とトータルにブランドを体験させることについては、自動車業界全体が他の業界よりも出遅れている部分ではないかと思います。そういった意味ではトヨタが顧客視点に立ち、レクサスのディーラーにホテル並みのおもてなしと高級ブランドショップを思わせるVMDの演出を導入できたことは画期的であるように思います。
BMWブランドは「本物」というイメージを保ち、「知的な成功」を象徴するブランドであり続けるために、常に機能面における評価、情緒面における共感と感動を生み出さなければならないことが宿命付けられています。言い換えれば、顧客として最も厳しい目を持つ人達を「絶対に飽きさせない」というギリギリの勝負を行っていると言えます。そのために、すべての企業活動において一切妥協を許さない姿勢を貫き通しています。しかし私がブランドショップで感じたのは、世界のトップブランドといえどもブランドと顧客が接するすべての点において、完璧にブランドをコントロールしていくのかがいかに難しいのかという事実です。