世代を超えて、夢を運ぶトミカ
大阪の南港ATCホールで4月27日からゴールデンウィーク中に開催されていた、タカラトミー主催のトミカ博に行ってきました。トミカ博というのは、トミカ誕生30周年記念イベントとして2000年から開催され始めたもので、トミカの歴史をはじめ、クイズ形式でトミカについて知るトミカアカデミー、歴代トミカの展示コーナー(小型・普通自動車、大型・貨物自動車、特殊自動車、ハイパーシリーズ、トミカドリームモータース等)がある他、トミカ記念モデルの実車も展示されています。他にも、釣り針を使用したトミカつり、好きな色を選んで組み立ててもらえる組立工場体験、実際に乗れるトミカなど、1枚100円のチケット制で体験ができるアトラクションがあり、小さな遊園地「トミカランド」といった感じでしょうか。当初は東京で開催されていましたが、「大人も子どももトミカを身近に体験できるイベント」と好評の末、大阪、名古屋、札幌、北九州でも開催されるようになりました。
さて、そのトミカ博ですが、来場していた客層は、トミカの主要ターゲットである家族連れが8割強、20代友達連れ等が1割、トミカマニア(?)と見られるような人が1割弱ほどです。
特に印象的だったのは、トミカに夢中な父親たちの姿が見受けられた点です。ビデオやデジタルカメラで楽しんでいる子どもを映す一方、昔懐かしいトミカのコーナーでは、いかにトミカを美しく映すかに力を注いでおり、父親本人が楽しんでいるようでした。
トミカの誕生は1970年。それまでのミニカーの世界は輸入品がほとんどであった中、「国産車のダイキャストミニカー」をフレーズに株式会社トミーより発売されました。それ以来、時代に応じた新製品を導入するだけでなく、復刻版や限定モデルなど、コレクター魂をくすぐる商品戦略を行ってきたトミカですが、トミカの原点である「夢を与えるものづくり」の部分は守り続けています。30周年を迎えた2000年代に入ってからは、特に「2世代もしくは3世代で楽しめ、夢を与えるブランド」として勢いをつけてきたように感じます。
もともとトミカは、実車のスケールをそのまま小さくすると長細く見えてしまうということから、車幅感が出るようなデフォルメがされています。これは、トミカのユーザーの中でも約8割を占める子どもたちが、ミニカーを上から見下ろすことを考慮してのこだわりです。このような子ども目線での商品開発をしながらも、2001年には元祖トミカ世代の大人たちやミニカーファンもターゲットとした、「トミカリミテッド」シリーズを誕生させました。このシリーズは、今までのトミカのフォーマットを守りながらも、形状や彩色などにこだわり、徹底的にリアルなミニチュアカーとして、通常のトミカシリーズとは別のブランドとして販売されています。さらに、2004年には「もしも、トミカが昭和30年代に誕生していたら」というコンセプトのもと、昭和30年代の車を集めた「トミカリミテッド ヴィンテージ」シリーズが新たに加わりました。
「大人向けのトミカ」開発の背景には、少子化の影響から事業領域を拡大する必要があったことに加え、近年の大人向け玩具市場の伸びによる後押しがあったと考えられます。
2003年にバンダイによって発売された、小さなフィギュアが音楽を演奏する「LITTLE JUMMER」は、ケンウッドとコラボレーションすることで音質にこだわった他、書店や紳士服売り場など、玩具というカテゴリーを超えた販売ルートを使用。その結果、21,000円から52,500円という高価格にも関わらず40代以上の男性の心をつかみ、2007年3月末までに累計約8万台を達成するほどのヒット商品となっています。また、バンダイによる「仮面ライダー変身ベルト(31,500円)」や、学研による「大人の科学(2,300円)」など、近年は40代以上向けの懐古的、かつ「玩具」にとどまらない本格的なホビー商品のへの注目が高まっています。
一昔前はとにかく「働く男性」が魅力的だと思われていましたが、今や仕事だけでなく、「自分時間への投資」も惜しまず、プライベートも充実していることが、魅力的な男性像であると評価される傾向が見られます。今世紀に入り、40代や団塊世代向けの男性雑誌も次々と出版され、男性の趣味を特集した記事もたびたび登場するようになってきました。ファッション、釣り、車、旅行・・・さまざまな「こだわり」がある中、いくつになってもどこかに残っている「子ども心」を刺激し、懐かしい気分に浸れる、純粋に楽しめる懐古的な玩具は、玩具にとどまらない「リアルさ」を追求することで、立派な「趣味のアイテム」となり得るのではないでしょうか。
子どもが楽しむ「トミカ」は走らせ、街を作って遊ぶトミカ。一方大人向けの「トミカリミテッド」は眺めて、昔の思い出やその当時の夢、憧れにふけりながら楽しむトミカ。今私が気になるのは、今はまだ、「トミカリミテッド」が大人向けのミニカーでしかないという点です。トミカ博でも感じましたが、もっと「トミカリミテッド」を大人向けホビー商品のブランドとして意識させるマーケティング展開があってもよいのではないでしょうか。例えば、リミテッドの時代にふさわしい街並みやフィギュアを組み合わせ、ミニカーを飾る空間までを「トミカリミテッド」ブランドとしたシーン提案を行うのもよいかもしれません。また、同じような趣味を持つ仲間が集い、リミテッドコレクションの披露や「大人の趣味」に関する情報を交換できるSNSを利用したサイトがあっても面白そうです。
私自身も「トミカリミテッド」シリーズを購入し、インテリアとして棚に並べていますが、それでしかありません。ミニカーをただコレクションボックスに並べて楽しむだけでなく、趣味世界として、思わず夢中になってしまうような仕掛けがあれば、「トミカリミテッド」は、単なる「大人向けのトミカ」を超えて、「トミカ」全シリーズにおいてもハイクラスなサブブランドとしての深さとおもしろさが出てくるのではないかと感じました。
タカラトミー トミカ公式サイト
http://www.takaratomy.co.jp/products/tomica/
TCDブランディングカンパニー 羽田恵理