2026.05.12

商品ブランディングとは?ブランド戦略を商品接点と顧客認識へつなぐ方法

生山 久展 株式会社TCD ブランディングオーソリティー

商品ブランディングとは?ブランド戦略を商品接点と顧客認識へつなぐ方法

この記事の定義

  • 商品ブランディングとは:ブランド戦略を商品接点へ変換し、顧客の認識や選択理由として蓄積させる活動。「良いものを作る」だけでなく、「その商品が真っ先に思い出される状況(CEP)を設計する」ことまでを含みます。
  • CEP(カテゴリー・エントリー・ポイント)とは:顧客がある商品カテゴリーを欲する「きっかけ・状況・動機」のこと。CEPを設計・訴求し続けることで、そのカテゴリーで真っ先に想起されるブランドを目指します。
  • ブランド戦略との関係:ブランド戦略が組織全体の判断基準を定めるとすれば、商品ブランディングはその戦略を「商品との接点」という最も具体的な場面で顧客認識に変換する実装です。

「良い商品なのに選ばれない」「競合との違いが伝わらない」——この課題の多くは、商品ブランディング、特に顧客の「認識接点(CEP)」の設計が不足していることから生じます。本記事では、最新のエビデンス・ベースド・マーケティング(EBM)の知見をもとに、商品ブランディングとCEP設計の要諦を解説します。ブランド戦略とは?ブランド価値とは?もあわせてご参照ください。

商品ブランディングとは何か

最近、マーケティングの世界では、カテゴリー・エントリー・ポイント(CEP)という言葉を見かけることが増えてきました。CEPとは、顧客がブランドカテゴリーへ入る「きっかけ」や「入口」を設計する考え方です。

何かの商品を利用する時の顧客の感情・心理・気分にフィットしたCEPを訴求し続けることで、真っ先に思い出されるブランドになることを目指します——これが商品ブランディングの核心です。コカ・コーラは長年「爽やかなひと時」というCEPを訴求し続けています。「喉の渇きをうるおす」だけなら水でもお茶でも構わないはずですが、コカ・コーラのあの独自の味や爽快な気分を味わいたいと思う瞬間があります。これがCEP設計によって形成された顧客認識です。

コカ・コーラのCEP事例

商品ブランディングとブランド戦略の関係

商品ブランディングはブランド戦略の実装の中で最も「顧客接点に近い」層を担います。ブランド戦略が「なぜこの会社を選ぶか」の判断基準を定めるとすれば、商品ブランディングは「なぜこの商品を今選ぶか」という具体的な認識を設計します。

chocoZAPはRIZAPが2022年から展開する新業態で、今や全国1800店舗以上・会員数110万人と大きな成功を収めています。従来のジムには「本格的に体を鍛えたい」という1つのCEPしかなかったところに、「ちょっとしたすき間時間に体を動かしたい」という新しいCEPを持ち込みました。サラリーマンがスーツ姿のままでマシーントレーニングするCMは、このCEPを強烈に印象付けました。

chocoZAP

機能価値だけでは選ばれにくい理由:EBMの科学的知見

CEPの概念を提唱したのは、南オーストラリア大学のエビデンス・ベースド・マーケティング(EBM)グループのジェニー・ロマニウク教授です。EBMグループは、コトラーの「既存顧客のロイヤリティを高めることが重要」という従来のロイヤルティ重視の考え方に対して異なる視点を提示し、ブランドの成長には「新規顧客を獲得し浸透率を上げること」が重要というデータを示しました。

「STPでブランドは成長しない」「ブランド成長は既存維持よりも新規獲得」——これらのファクトが示すのは、機能価値と品質を磨くだけではブランドは広がらないということです。広く新規顧客を獲得するためには、商品カテゴリーへの関与度が高くないライトユーザーを取り込む必要があり、ライトユーザーは「ある状況(CEP)になった時にたまたま思い出したブランド」を購入する傾向が強いです。

「この場面ならこのブランド」という記憶の結びつきを強くすることが実際の購買行動に直結します。顧客は比較検討の前に、まず思い出したブランドから選択する傾向があります。第一想起のブランドを購入する確率は60%前後とも言われています。

ブランド想起と購買確率

商品接点からブランド価値を形成する方法:空白のCEPを見つける

CEPをどのように設計すればよいか。CEPの提唱者であるジェニー・ロマニウク教授が開発した「7Wフレームワーク」を使いながらアイデアを案出していきます。

競合がまだ見つけていない「空白のCEP」を見つけるためには、商品の機能やスペックから少し離れて、「顧客の生活の文脈」で考えることが重要です。SNSやインタビュー調査などでカテゴリーにおける顧客の生の声をなるべく数多くインプットしておくことが、精度の高いCEP発見につながります。

CEP設計の7Wフレームワーク

CEPは、従来から策定してきたSTPや提供ベネフィットなどの解像度を高める目的で設計するものです。これ単独で活用するというより、他のフレームと補完的に活用するものといえます。

今後いかにテクノロジーが進化しても、人間の「想起=思い出す仕組み」が変わることはありません。「真っ先に思い出されるブランド」の創出を目指して、CEPの構築に「真っ先に思い出されるブランド」を形成することが、商品ブランディングの重要な役割になっています。

商品ブランディングの情緒的価値については商品ブランディングの「世界観」とは?情緒的価値で顧客共感を生む方法もあわせてご参照ください。

[筆者プロフィール]

生山 久展

株式会社TCD ブランディングオーソリティー

戦略開発、調査・分析、商品開発、販促展開まで幅広いブランディング業務に従事。30年余の実務経験をベースに、的確な現状分析から本質的な課題解決のプランニングを得意とする。

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