2026.06.24
企業ブランディングの現在地 ― 宣伝会議コーポレートブランディングカンファレンスより
田中 恵子 株式会社TCD クリエイティブディレクター

2026年5月26日に開催された宣伝会議主催の「コーポレートブランディングカンファレンス」にて、TDI株式会社様とともに登壇する機会をいただきました。
当日は想定以上に多くの方にご参加いただき、この場を借りてあらためてお礼申し上げます。
私自身、あらためて企業ブランディングへの関心の高さを感じる時間になりました。
採用競争の激化や事業変革が進む現在、企業ブランディングは、外へのイメージ発信にとどまらず、社員に自社の価値をどう伝え、どう共有していくかという経営課題になっています。
セミナーでは、TCDで手がけたTDI株式会社様のリブランディング事例をもとに、「社員が自社に誇りを持てる会社にする企業ブランディング」についてお話ししました。
本記事では、当日のセミナー内容を交えながら、多くの優良企業が陥りがちなブランディングのポイントと、組織を動かすためのブランディングプロセスをご紹介します。
目次
良い会社なのに良さが伝わらない理由
今回、プロジェクト事例としてご紹介したTDI株式会社様は、1968年の創業以来、IT事業で成長してきた総合IT企業です。決して課題の多い会社ではありません。社員の皆さんがしっかりと仕事に向き合い、お客様との関係も良好で、事業も成長している企業です。
しかし、そんな優良企業でもプロジェクトの出発点となったのは、
「自社の良さが十分に伝わっていない」
という課題でした。
TDI様は、創業60年を迎えるというタイムラインにあり、ソリューション領域への拡大、DX・AI活用など、次のステージへ進むタイミングにありました。その中で、「これからのTDIらしさとは何か」を、あらためて認識を揃える必要が出てきました。
そこで社員に「TDIらしさは何か」と尋ねると、所属する部門によって答えが異なる、明確な答えがない、という状況でした。
理念や考え方が存在していなかったわけではありません。しかし、社員一人ひとりが同じ方向を向くための共通言語として十分に機能している状態ではありませんでした。その結果、採用や営業活動などさまざまな場面で、自社らしさが伝わりにくくなっていたといえます。
多くの企業が抱える「言語化」と「共感」の課題
理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定している企業であっても、
・組織としての一体感が弱い
・若手・中堅の帰属意識が低い
・社員の方向性がバラバラ
・離職率が高い
といった課題を抱えているケースは少なくありません。

つまり、課題は「言葉がないこと」だけではありません。言葉があったとしても、それが社員の共感につながっていない。行動の判断基準になっていない。その状態では、理念もパーパスも十分には機能しません。
すでにさまざまな取り組みを進められている企業も多くあります。
ワークショップ、社内イベントなどのエンゲージメント施策、社内報やコミュニティ運営などの社内広報、決して何もしていないわけではありません。
しかし、それぞれの施策は良い取り組みであっても、
なぜ行うのか。
何を目指しているのか。
この共通認識が曖昧なままでは、組織全体の推進力にはなりにくい。施策同士がつながっておらず、点在している状態になってしまいます。本質的な課題は、施策が足りないことではありません。社員が同じ未来を見て、同じ価値基準で判断できる状態がつくられていないことです。
ブランディングの出発点は「携えたいと思える言葉」
企業ブランディングは理念策定だけではありません。組織として大切にしたい価値や方向性を共有し、さまざまな施策を一つの目的へつなげていくあらゆる活動だと私たちは考えています。調査、分析、デザイン、浸透施策、組織文化づくりなど、多くの取り組みが必要になります。
しかし、その出発点にはやはり言葉があります。
社員が理解できる言葉。
社員が共感できる言葉。
そして、自分自身も携えていたいと思える言葉。
その言葉があるからこそ、日々の判断や行動に一貫性が生まれます。企業ブランディングとは、そうした共通言語を組織の中につくる活動でもあるのです。
TDI様では、調査や対話を重ねながら、自社らしさを整理し、最終的に「心でITを」という言葉へと結実しました。この言葉によって、事業や部門の違いを超えて、「人にやさしく、心あたたかな企業である」という共通の方向性が社内で共有されるようになりました。
理念だけで企業ブランディングが成功するわけではありません。しかし、理念がなければ始まりません。社員が心に留めておきたいと思える言葉をいかに生み出すかが、とても大切です。

では、企業ブランディングはどう進めればよいのか
企業ブランディングは包括的な取り組みで、さまざまな打ち手が考えられるからこそ、多くの企業が「何から始めればよいかわからない」という状態に陥りがちです。自社の状況や特性を踏まえて、最適な打ち手は何か、どんなフレームワークなら解決できるか、と迷われている方も少なくないのではないでしょうか。
これまで多くの企業ブランディングを手がけてきたTCDの取り組みはとてもシンプルです。大きく3つのステップで支援を行っています。

まずは調査分析を行なって、現在地を把握します。
経営層は何を目指しているのか。
社員は会社をどう見ているのか。
顧客や社会からはどのように認識されているのか。
定量調査やキーマンヒアリング、ワークショップを通じて、ブランドの強みや課題、認識のギャップを顕在化します。
次に、企業らしさや目指す方向を言葉と形にします。
これまで大切にしてきたもの、これから目指していきたいことを整理しながら、企業側のビジネス、ミッション、ビジョン、バリュー、そして顧客から見た提供価値として整理していきます。
これらを統合させてブランドメッセージ、ブランドストーリーなど、社員が「自分たちらしい」と感じられるストーリーへと整理していきます。
そして最も重要なのが浸透です。
どれほど良い理念やコンセプトをつくっても、社員の行動につながらなければ意味がありません。
ワークショップや研修、コミュニケーション施策などを通じて、ブランドの理念を日々の判断や行動に結びつけていきます。
企業ブランディングは、言葉をつくって終わる活動ではありません。
社員一人ひとりが自社らしさを理解し、自分の仕事と結びつけられる状態をつくること。
それが、企業ブランディングの本質だと私たちは考えています。
まずは自社の現在地を知ることから
皆さんの会社は、今どの状態にあるのでしょうか。
私たちはブランディング支援の際、まず現状把握から始めます。
TCDでは、「自社の良さが十分に伝わっていない」といった課題に対して、調査・分析による現状把握のために「ブランド共感スコア診断」を推奨しています。
この診断では、主に以下のような状態を確認します。
① 理念そのものが整理されていない
② 理念はあるが浸透していない
③ 理念と行動が結びついていない
①は、単に「理念が存在しない」という意味ではありません。
理念らしき言葉はあっても、目指す姿が抽象的で分かりにくい、社員の日々の仕事に置き換えにくい、判断基準として使いづらいという状態も含まれます。この状態で浸透施策を進めても、社員にとっては何を理解し、何に共感し、どう行動すればよいのかが見えにくくなります。だからこそ、浸透の前にまず「伝えるべき中身」が整理されているかを確認することが重要です。
②は、言葉は存在するものの社内施策との連動が弱い状態。
③は、理解はしているが評価制度や業務プロセスにまで落とし込めていない状態を指します。
自社がどのフェーズにあるのかを正しく把握することが、ブランディングの第一歩になります。
「ブランド共感スコア診断」では、経営層と社員の認識ギャップ、理念への理解・共感度を確認し、今後必要な取り組みを提言します。
すでにブランディングに取り組まれている企業様も、これから始めようとされている企業様も、まずは一度、自社の現在地を確認してみることをお勧めしています。
自社の現在地を確認されたい方は
企業ブランディングやインナーブランディングの事例、「ブランド共感スコア診断」についてご興味がおありの方は、アンケートフォームにご回答ください。紹介資料をお送りいたします。